晩鐘(下)
- 作者: 乃南アサ
- 出版社/メーカー: 双葉社
- 発売日: 2003/05
- メディア: 単行本
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ある被害者家族の言葉。
「身内を亡くした哀しみっていうものはね、そりゃあ、消えません。ただ、時間と共に、諦めってヤツがだんだん広がってくるだけです。犯人への憎しみっていうヤツも、消えません。今だって、これからも、ずっと憎いに決まってるんです。(略)
哀しみ続けて、さらに憎み続けてっていうのは、もうねえ、体力が続かないんです」
「だけど、そういう意味では、それほどの努力をしなくても、どう時間がたっても、姿を変えないものがあるんです。
(略)
それが、恨みですよ」
建部の言葉。
「僕は、その強さを尊敬しています。だけど、彼女のそういう強さは、そのまま、脆さにもつながるとも、思っています。正直すぎるし、不器用すぎます。まともにことに当たりすぎて、余計に傷つくこともあるでしょう。それに、彼女の神経です。ごまかすことも出来ず、かといって逃げ場もなくて、これまでだって、ずい分、つらい目に遭ってきていると思うんです」
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