晩鐘(下)

晩鐘〈下〉

晩鐘〈下〉

真裕子はようやく幸せを掴みそう。でも大輔は、自分が悪いことをしたわけでもないのに、加害者の家族とは知らずに、でもその影響をうけて育ち、被害者の家族としてバラバラになってしまい、最後に犯罪を犯すなんて。

ある被害者家族の言葉。

「身内を亡くした哀しみっていうものはね、そりゃあ、消えません。ただ、時間と共に、諦めってヤツがだんだん広がってくるだけです。犯人への憎しみっていうヤツも、消えません。今だって、これからも、ずっと憎いに決まってるんです。(略)
哀しみ続けて、さらに憎み続けてっていうのは、もうねえ、体力が続かないんです」
「だけど、そういう意味では、それほどの努力をしなくても、どう時間がたっても、姿を変えないものがあるんです。
(略)
それが、恨みですよ」

建部の言葉。

「僕は、その強さを尊敬しています。だけど、彼女のそういう強さは、そのまま、脆さにもつながるとも、思っています。正直すぎるし、不器用すぎます。まともにことに当たりすぎて、余計に傷つくこともあるでしょう。それに、彼女の神経です。ごまかすことも出来ず、かといって逃げ場もなくて、これまでだって、ずい分、つらい目に遭ってきていると思うんです」

100冊読書(21冊/50冊)