誰か

誰か―Somebody (文春文庫)

今多コンツェルンの広報室の杉村三郎。普通の会社員だけど、事故死した運転手さんのことについて調べて、解決？する。

　私の母は、私が子供のころから、毒のある口でさまざまなことを教えてくれた。正しい教えもあれば、間違った教えもあった。私が未だに判断を保留している教えもある。
　そうした「未決」の教えのなかのひとつが、（略）「既決」の箱のなかに移った。
「男と女はね、くっついていると、そのうち品性まで似てくるもんだよ。だから、付き合う相手はよく選ばなくっちゃいけないんだ」
「既決」の箱の真ん中あたりにある教えも、私はついでに取り出して再吟味した。
「人間てのは、誰だってね、相手がいちばんいわれたくないと思っていることを言う口を持ってるんだ。どんなバカでも、その狙いだけは、そりゃあもう正確なもんだから」

100冊読書（32冊／50冊）