四季 夏

四季 夏 (講談社文庫)

四季 夏 (講談社文庫)

天才も恋愛をする、感情で動くことをしなさすぎるけど。それにしても行動がせっかちというか直接的すぎるというか、私には考えられない。

「うまくいくかどうかなんて、愛情とは関係がないのです」
「どういうこと?」四季は目を細めた。「不思議なことを言う」
「失礼ですが、たぶん、四季様もいつかご理解なさるでしょう。相手がどう思おうが、どんな仕打ちが受けようが、自分から相手に向かった愛情の強さには関係がないのです」
「それで、報われるの?」
「それも無関係です」各務は首をふった。「よくわかりませんが、そういうものなのです。人を愛することは、うーん、自分が死んでしまうことと、大差がありません」
「では、どうしてそんな無意味な方向へ力を注ぐのですか?」
「申し訳ありません。私は……」各務は言葉に詰まった。何か、彼女の感情に響くところがあったようだ。「その、結局は、私自身のことしか考えられない人間なのです。(以下略)」

「私もそう思います。現代の医学は、病気を治し過ぎる。元通りに戻ることが善だと皆が信じている。したがって、その程度の結果しか得られない。生きることが最善だという概念があるために、人は最良の方法を見失っているのです」

100冊読書(27冊/50冊)